屋外にて笑顔で人差し指を立てているスーツ姿の女性

 それでは次に、各職種に共通する技能ビザの条件(要件)について確認していきましょう。

 各職種に共通する技能ビザの条件(要件)をまとめると、以下のようになります。

日本にある会社などとの契約

万年筆で書かれた契約(contract)の文字

 技能ビザの取得を希望する外国人は、日本にある会社、事業所、団体などと契約を交わさなければなりません。

 契約を交わす相手は、企業などの私的機関に限られません。例えば、地方自治体などの公的機関でもかまいません。

 出入国在留管理局への技能ビザの申請時は、雇用契約の場合、雇用契約書を証明書類として提出することになります。

 

 典型例は、日本にある会社などとの雇用契約ですが、業務委託契約でも認められる可能性があります。ただし、業務委託契約の場合は、雇用契約の場合よりも許可へのハードルが高くなります。

 また、法人だけでなく、個人事業主との契約でも認められる可能性はありますが、法人との契約の場合よりも許可へのハードルが高くなります。

 

単純労働ではないこと

飲食店で勤務中のキッチンスタッフ

 就労ビザでは、原則、いわゆる「単純労働」に従事することは認められていません。

 技能ビザも就労ビザの一種であり、熟練した技能を持つ外国人が従事する専門職を対象としていますので、やはり単純労働に従事することは認められていません。

 

 例えば、調理師として技能ビザを取ったのに、皿洗いなどの業務に専ら従事したり、建築技術者として技能ビザを取ったのに、建築現場での単純作業にひたすら従事したり、ソムリエとして技能ビザを取ったのに、ホール接客などの業務に専ら従事したりすることは不法就労になります。

 万が一そのような不法就労が発覚した場合、不法就労をした外国人だけでなく、不法就労をさせた雇用主も処罰の対象となります。

 不法就労をさせた雇用主は、「不法就労助長罪」という罪に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはこれらの両方が課せられる可能性があります。

 

事業の適正性・安定性・継続性

 技能ビザを申請する外国人の契約相手が行っている事業の適正性・安定性・継続性も、審査の対象となります。

 

事業の適正性

黒板にチョークで手書きされたcompliance(法令遵守)の文字

 違法行為や不正行為を行っている会社や店舗は、事業を適正に運営しているとは判断されません。

 

 また、会社や店舗が許認可を必要とする事業を行っている場合は、その許認可を得ていることが求められます。

 例えば、外国料理の店で勤務する調理師を雇用するケースでは、その料理店が飲食店営業許可を受けている必要があります。

 

事業の安定性・継続性

都会の街並みを背景にした業務成績のチャート

 事業に安定性と継続性があること(即ち、事業を安定して継続できる状態にあること)も求められます。

 事業の安定性および継続性は、事業(店舗)の売上げ、利益、会社(店舗)の形態、従業員数、会社(店舗)の存続年数などを考慮して判断されます。

 

 事業に安定性および継続性があることは、決算書(貸借対照表や損益計算書など)などで立証することになります。

 決算が黒字であれば問題ありませんが、赤字決算の場合は、事業の安定性・継続性の審査上、不利に働きます。

 特に、貸借対照表で債務超過になっている場合などは、事業の安定性・継続性の審査上、かなり不利になります。

 

 赤字決算や債務超過の場合は、なぜ赤字決算・債務超過に陥っているのか、そして今後の事業の安定化への見通しや取り組みについて、申請時に理由書などで何らかの説明をしておいた方がよいでしょう。

 場合によっては、事業計画書の提出が必要になるかもしれませんし、債務超過の場合は、中小企業診断士などによる経営改善計画書が求められるかもしれません。

 

 まだ決算を迎えていない新規設立の会社の場合は、決算書に代えて、事業計画書の提出が求められます。

 

 また、例えば、これまでに飲食事業を行っていなかった企業が、新たに外国料理レストランを出店し、外国料理の調理師を雇用するといった場合は、この新規の飲食事業に関する事業計画書を提出することで、事業の安定性・継続性を証明することになります。

 

日本人と同額以上の報酬

給与明細書の上に置かれた計算機とペン

 就労ビザでは、外国人の報酬は、日本人の報酬と同額以上でなければなりません。

 ですから、就労ビザの一種である技能ビザでも、外国人の報酬は、日本人の報酬と同額以上であることが求められます。

 つまり、単に外国人であることを理由として、外国人の報酬を日本人の報酬よりも低くしていると、この「報酬」の条件をクリアできません。

 

 なお、ここで言う「報酬」は、基本給と賞与の合計を意味します。

 通勤手当、扶養手当、住宅手当などの実費弁償的な手当は、報酬には含まれません。

 

 報酬の月額は、基本給12ヶ月分と賞与の合計を12で割った額になります。

 例えば、基本給の月額が20万円で、30万円の賞与が年2回ある場合は、(20万円×12)+(30万円×2)= 300万円ですので、報酬の月額は 25万円となります。

 

 日本人と同額以上の報酬であるか否かは、基本的には、外国人の報酬が、同じ会社(店舗)で同様の業務に従事する日本人の報酬と同額以上か否かによって判断されます。

 ただし、同種の業務を行う他の会社(店舗)の賃金も参考にして判断されますので、日本人に支払われる賃金が同じ業界の平均賃金よりも明らかに低い場合は、たとえ日本人の報酬と同額以上であっても「報酬」の条件をクリアすることはできません。

 

 報酬の水準は業種ごとに異なるため、一概には言えませんが、報酬の月額が17~18万円を下回ると不許可リスクが高くなります。

 

外国人本人の素行

法廷用の木槌と秤

 技能ビザを申請する外国人は、素行が善良であることも条件となります。

 当然ながら、国内・国外を問わず、犯罪行為を行っている外国人は、この条件をクリアできません。

 例えば、海外から外国人を技能ビザで呼び寄せる場合、たとえ日本では犯罪歴が無くても、本国で重大な犯罪を犯している場合などは、素行が善良であるとは言えません。

 

 さて、技能ビザを申請するケースとしては、調理師で申請するケースが最も多いのですが、調理師で技能ビザを取得するためには、様々な注意点があります。

 そこで、次回のコラム【調理師で技能ビザを申請する際の注意点①(勤務先は外国料理の専門店である必要があります)】では、まず、1つ目の注意点について詳しく説明させていただきます。

 

まとめ

 

Memo   

各職種に共通する技能ビザの条件は、日本にある会社などとの契約、単純労働ではないこと、事業の適正性・安定性・継続性、日本人と同額以上の報酬、そして外国人本人の素行です。

技能ビザを取るためには、該当する職種ごとの条件とともに、これらの共通条件もクリアしなければなりません。

 

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