技術・人文知識・国際業務ビザの基本要件②:専攻内容と職務内容との関連性

 技術・人文知識・国際業務ビザの基本要件の中でも、「専攻内容と職務内容との関連性」は、特に判断が難しい要件となります。

 ここでは、この「専攻内容と職務内容との関連性」について詳しく説明してみたいと思います。

「専攻内容と職務内容との関連性」とは

 「人文知識」カテゴリー(文系・ホワイトカラー系の専門職)および「技術」カテゴリー(理系・エンジニア系の専門職)の場合、外国人が大学や専門学校などで学んだ内容と予定している仕事の内容とが関連していることが求められます。

 

 「関連性」があるか否かが問われますので、専攻内容と職務内容とが完全に一致していることまでは求められません。

 ですから、予定している仕事の内容が、大学や専門学校などで学んだ知識や技術を活かせるような業務であるか否かがポイントとなります。

 

 技術・人文知識・国際業務ビザの「人文知識」カテゴリーや「技術」カテゴリーで外国人を採用する際には、採用予定の外国人が大学や専門学校などで何を学んでいたのか、そして履修した内容が仕事の内容と関連しているのか否かについて、入念に確認しなければなりません。

 

「関連性」の要件を満たし得るケース

 それでは、「関連性」の要件を満たし得るケースの例をいくつか挙げてみましょう。

<OK例1>

 大学で経営学科を専攻していた外国人がマーケティング業務を担当する

 

<OK例2>

 大学で国際経済学科を専攻していた外国人が海外営業業務を担当する

 

<OK例3>

 大学で情報工学科を専攻していた外国人がシステムエンジニアとして働く

 

<OK例4>

 大学で会計学科を専攻していた外国人が経理業務を担当する

 

<OK例5>

 大学で法律学科を専攻していた外国人が法務業務を担当する

 

<OK例6>

 日本のビジネス専門学校で貿易学科を専攻していた外国人が貿易業務を担当する

 

<OK例7>

 日本のコンピュータ専門学校で情報処理学科を専攻していた外国人がITプログラマーとして働く

 

<OK例8>

 日本の語学専門学校で翻訳・通訳学科を専攻していた外国人が翻訳業務・通訳業務を担当する

 

<OK例9>

 日本の語学専門学校で語学教育学科を専攻していた外国人が語学教師として働く

 

 これらの例のように、大学や専門学校などで習得した知識や技術を活かすことができる業務に就く場合は、専攻内容と職務内容との間に「関連性」があると判断される可能性が高くなります。

 

「関連性」の要件を満たせないケース

 一方、「関連性」の要件を満たせないケースとはどのような場合でしょうか。

 「関連性」の要件を満たせないケースについても、いくつか例を挙げてみましょう。

<NG例1>

 大学で政治学科を専攻していた外国人が経理業務を担当する

 

<NG例2>

 大学で美術学科を専攻していた外国人がITプログラマーとして働く

 

<NG例3>

 大学で会計学科を専攻していた外国人がシステムエンジニアとして働く

 

<NG例4>

 大学で教育学科を専攻していた外国人が貿易業務を担当する

 

<NG例5>

 大学で法務学科を専攻していた外国人が生産管理業務を担当する

 

<NG例6>

 日本のビジネス専門学校で貿易学科を専攻していた外国人が語学教師として働く

 

<NG例7>

 日本のコンピュータ専門学校で情報処理学科を専攻していた外国人が法務業務を担当する

 

<NG例8>

 日本の調理専門学校で製菓学科を専攻していた外国人がマーケティング業務を担当する

 

<NG例9>

 日本の服飾専門学校で服飾学科を専攻していた外国人が海外営業業務を担当する

 

 これらの例のように、大学や専門学校などで習得した知識や技術を活かすことができない業務に就く場合は、専攻内容と職務内容との間に「関連性」が無いと判断されてしまいます。

 

専攻内容と職務内容とでカテゴリーが異なる場合でも、「関連性」の要件をクリアできるケースがあります

 技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)は、以前、技術ビザ(在留資格「技術」)と、人文知識・国際業務ビザ(在留資格「人文知識・国際業務」)とに分かれていました。

 しかし、外国人材をより柔軟に受け入れることを目的として、2015年4月1日から、技術ビザと人文知識・国際業務ビザとが一本化されて、技術・人文知識・国際業務ビザとなりました。

 

 これにより、専攻内容と職務内容とでカテゴリーが異なる場合であっても、就労ビザが許可される可能性が広がりました。

 

 例えば、大学で会計学を学んでいた外国人が、ソフトウェア開発会社に就職し、会計学の知識を活かして会計ソフトの開発業務を担当する場合を考えてみましょう。

 この場合、会計学は、いわゆる「文系」の学科ですので、大学での専攻内容は「人文知識」カテゴリーに該当する一方で、職務内容は、ソフトウェア開発ということで、いわゆる「理系」の職種であり、「技術」カテゴリーに該当します。

 

 次に、大学で機械工学を学んでいた外国人が、機械製品を製造する会社に就職し、機械工学の知識を活かして機械製品の海外営業業務を担当する場合を考えてみましょう。

 この場合、機械工学は、いわゆる「理系」の学科ですので、大学での専攻内容は「技術」カテゴリーに該当する一方で、職務内容は、海外営業ということで、いわゆる「文系」の職種であり、「人文知識」カテゴリーに該当します。

 

 これらのケースのように、専攻内容のカテゴリーと職務内容のカテゴリーとが異なる場合であっても、大学などで学んだ知識を活かせるのであれば、「専攻内容と職務内容との関連性」の要件をクリアできる可能性があります。

 

 つまり、採用予定の外国人の専攻科目が文系だからといって、職務内容は必ずしも文系の職種のみに限定されませんし、採用予定の外国人の専攻科目が理系だからといって、職務内容は必ずしも理系の職種のみに限定されないということになります。

 

「関連性」の確認のためには、成績証明書もチェックしましょう

 近年、大学や専門学校の学部・学科は多様化していますので、学部名・学科名を聞いただけでは、学校で実際に何を学んでいたのかが、よく分からないことが多々あります。

 

 ですから、専攻内容と職務内容との「関連性」の有無を適切に判断するためには、卒業証書だけでなく、成績証明書の履修科目もチェックすることをお勧めします。

 

 成績証明書は、出入国在留管理局に技術・人文知識・国際業務ビザを申請する際にも、「関連性」に関する重要な立証資料となります。

 外国人を採用する際には、本人から、卒業証書とともに、履修科目が記載された成績証明書も提出してもらうようにしましょう。

 

「関連性」の要件は、大学卒業者よりも専門学校卒業者の方が厳しく審査されます

 出入国在留管理局による審査において、「専攻内容と職務内容との関連性」については、大学卒業の場合は、比較的緩やかに審査されるのに対し、専門学校卒業の場合は、厳密に審査されます。

 

 「関連性」の審査がより厳しいことから、専門学校卒業者を採用する場合には、成績証明書の履修科目を特に入念に確認しておいた方がよいでしょう。

 

大学卒業者に対する「国際業務」カテゴリーの例外規定

 なお、「国際業務」カテゴリー(翻訳、通訳、語学講師、海外取引業務、デザイナー、商品開発、広報宣伝など)に関しては、大学卒業者に限り、専攻内容と職務内容との関連性について例外規定が設けられています。

 

 大学卒業者が「国際業務」カテゴリーの職種のうち、翻訳業務や通訳業務を担当する場合、あるいは語学教師として働く場合に限っては、専攻内容と職務内容との関連性は問われません。

 

 つまり、大学卒業者が翻訳・通訳・語学教師の仕事に就くのであれば、大学でどのような科目を専攻していたかは問題になりません。

 

「関連性」については雇用理由書で詳しく説明しましょう

 実際には専攻内容と職務内容との間に関連性があるにも関わらず、その立証が不十分であったために、技術・人文知識・国際業務ビザが不許可になってしまうケースがあります。

 

 このような事態を避けるために、申請時には、立証資料として成績証明書などを提出するとともに、雇用理由書を作成して、雇用予定の外国人の専攻内容と予定している職務内容との間に「関連性」があることを丁寧に説明することをお勧めします。

 

 次回のコラム【技術・人文知識・国際業務ビザの基本要件③:日本にある会社などとの契約】では、3つ目の基本要件である「日本にある会社などとの契約」について説明させていただきます。

 

まとめ

 

Memo   

「人文知識」カテゴリー(文系・ホワイトカラー系の専門職)および「技術」カテゴリー(理系・エンジニア系の専門職)の場合、外国人が大学や専門学校などで学んだ内容と予定している仕事の内容とが関連していることが求められます。

「専攻内容と職務内容との関連性」を適切に判断するために、卒業証書だけでなく、成績証明書の履修科目も確認しましょう。

「専攻内容と職務内容との関連性」は、大学卒業の場合は、比較的緩やかに審査される一方で、専門学校卒業の場合は、厳密に審査されます。

大学卒業者が「国際業務」カテゴリーの職種のうち、翻訳・通訳・語学教師の仕事を行うのであれば、「専攻内容と職務内容との関連性」は求められません。

「関連性」の立証が不十分にならないように、申請時には、成績証明書などと一緒に雇用理由書を提出し、「関連性」があることを丁寧に説明しましょう。

 

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