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 日本で会社経営者として経営管理ビザを取得する上で、事務所の確保と並んで重要な条件(要件)となるのが「500万円以上の資本金」の出資です。

 ここでは、この「500万円以上の資本金」について詳しく解説させていただきます。

500万円以上の資本金とは

 日本で株式会社や合同会社を設立して事業の経営者となる外国人の方の場合、経営管理ビザを取得するためには、500万円以上の資本金を出資する必要があります。

 

 この500万円以上の資本金は、会社設立後、事業の準備や運営のために使うことができます。

 ですから、資本金を、例えば、事務所の家賃や、仕入れ、設備費、広告宣伝費、人件費など、事業に必要な経費の支払いに充ててもかまいません。

 

 資本金は、経営管理ビザを申請する本人が500万円以上を出資する必要があります。

 例えば、経営管理ビザを申請する本人が300万円を出資し、本人以外の方が200万円を出資するという場合は、経営管理ビザの資本金の要件をクリアすることはできません。

 

500万円以上の資本金を出資する際の注意点

 500万円以上の資本金を出資する際には、様々な注意点があります。

 経営管理ビザを取得するには、とにかく500万円以上を用意すればよいというわけではありませんので、以下の点について十分ご注意ください。

 

  • 資本金については出所を証明する必要があります

  • 資本金を振り込むタイミングには注意しましょう(株式会社を設立する場合)

 

資本金については出所を証明する必要があります

 500万円以上の資本金については、資金形成の経緯を証明する必要があります。

 つまり、出所不明なお金ではなく、どのように得たのかを証明できるお金で500万円以上の資本金を準備しなければなりません。

 

 自分の貯金を資本金にする場合や、親や親族などから借りて資本金を準備する場合が多いと思われますが、いずれの場合も、出所の証明は、基本的に書面によって行うことになります。

 

自分の貯金を資本金にする場合の注意点

 自分の貯金から出資する場合、預金通帳で資金が貯まっていく過程を証明することになります。

 例えば、毎月の収入の中から少しずつ貯金をして500万円を貯め、資本金にする場合などは問題無いですが、いきなり預金通帳に大きな金額が振り込まれているといった場合は、その出所を証明する必要が生じます。

 

親や親族などから借りて資本金を準備する場合の注意点

 親や親族などから借りて500万円を用意した場合は、返済方法なども明記した借用書(金銭消費貸借契約書)が必要となります。

 借用書に加えて、その親・親族との関係を証明する公的な書類が必要になるとともに、その親・親族に実際に資力があることを、例えば、預金通帳などで証明できなければなりません。

 

海外送金する場合の注意点

 日本にいる外国人が本国の親や親族などから海外送金を受けて資金を作った場合は、送金証明書などで証明することになります。

 

 海外送金の際には、名義にご注意ください。

 例えば、親から子への海外送金で資金を形成する場合、海外送金の送り手の名義が親の名義であり、受け手の名義が子の名義である必要があります。

 

 なお、海外送金の場合、1回につき送金できる限度額や年間の限度額についても注意が必要です。

 また、そのときの為替レートによっては、500万円を下回ってしまう場合もあり得ますので、送金時には為替レートにもご注意ください。

 

 海外送金の手数料を差し引くと500万円を下回るということも起こり得ますので、手数料についても事前に確認しておいた方がよいでしょう。

 

現金を持ち込む場合の注意点

 国外へ持ち出せる現金の限度額は国によって異なりますので、資本金を現金で日本へ持ち込む場合は、限度額にご注意ください。

 

 日本へ現金を持ち込む際は、小切手(トラベラーズチェックを含む)や有価証券などと合わせて100万円相当額を超える場合は、税関への申告(「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」の提出)を行う必要があります。

 この税関への申告が証明になりますので、100万円相当額を超える現金を持ち込む際は、必ず税関へ申告するようにしてください。

 言い換えれば、証明ができない現金を持ち込んで500万円を用意することは避けてください。

 

資本金を振り込むタイミングには注意しましょう(株式会社を設立する場合)

 会社を設立して経営者として経営管理ビザを取る場合、500万円以上の資本金を発起人の個人口座(日本の銀行の日本国内にある本店・支店の口座あるいは海外銀行の日本国内にある支店の口座)に振り込むことになります。

 株式会社を設立する場合は、この資本金を振り込むタイミングにも注意が必要です。

 

 株式会社を設立する場合、資本金の振り込みは、必ず公証役場で定款の認証を受けた後(定款認証日以降)に行ってください。

 公証役場で定款の認証を受ける前に振り込んでしまうと、株式会社の資本金として認められませんのでお気をつけください。

 

500万円以上の資本金が不要となる例外的なケース

 なお、以下のようなケースでは、500万円以上の資本金の出資が不要になります。

 

  ・事業の管理者として経営管理ビザを取るケース

  2名以上のスタッフをフルタイムで雇用するケース

 

事業の管理者として経営管理ビザを取るケース

 例えば、既に日本に存在する会社の管理職(役員、部長、支店長など)に就く場合は、事業の「管理者」ということになり、500万円以上の出資は必要ありません。

 

 ただし、500万円以上の出資に代えて、事業の経営または管理について3年以上の経験が必要となります。

 この3年以上の経験には、大学院で経営または管理に関する科目を専攻していた期間を含めることができます。

 

 また、管理者として経営管理ビザを取得する場合、報酬の額が日本人と同等以上であることも要件となります。

 例えば、会社内で同等の地位にある日本人がいる場合、管理者となる外国人の報酬は、その日本人の報酬と同等以上でなければなりません。

 

 なお、管理者として経営管理ビザを取得する場合に大きな問題となるのは、会社の規模です。

 例えば、小規模な会社の場合、経営者が事業の経営も管理も行うのが通常であるため、経営者以外に事業の管理を行う人が必要とは認められにくいでしょう。

 

 ですから、管理者として経営管理ビザを取得できるのは、経営者に加えて管理職の存在を必要とする一定規模以上の会社に限定されると言えます。

 

2名以上のスタッフをフルタイムで雇用するケース

 経営者として経営管理ビザを取る場合でも、2名以上のスタッフをフルタイムで雇用するのであれば、500万円以上の出資が不要となります。

 この場合の2名以上のスタッフは、日本人または身分系のビザ(例えば、「永住ビザ」、「配偶者ビザ」、「定住ビザ」など)を持つ外国人でなければなりません。

 

 しかし、人件費や社会保険料などのコストを考慮すると、最初から2名以上のスタッフをフルタイムで雇用するよりも、500万円以上の資本金を出資する方が現実的であるため、500万円以上出資して経営管理ビザの取得を目指すのが一般的です。

 

地方公共団体による起業支援を受ける場合の例外規定

 地方公共団体による起業支援を受ける場合は、経営管理ビザを申請する外国人の資本金が500万円に満たない場合でも、資本金の要件をクリアできる可能性があります。

 

 地方公共団体による起業支援を受けていると認められるには、以下の条件に該当する必要があります。

 

  (1) 地方公共団体が実施する起業支援事業の対象者として認定されていること

    地方公共団体が発行する「対象証明書」(支援対象者および支援内容などを記載)の提出が必要となります。

  (2) 地方公共団体が所有または指定するインキュベーション施設を事業所(事務所)として利用すること

  (3) 地方公共団体が事業所(事務所)に関する経費(専有スペースの賃料や共有スペースの利用料も含む)を申請人に代わって負担していること

 

 (3)の条件は、地方公共団体が所有または指定するインキュベーション施設の賃料が、このインキュベーション施設と同等の民間施設の賃料よりも安い場合などに、該当していると判断されます。

 

 例えば、地方公共団体が所有または指定するインキュベーション施設の賃料が月額1万円で、このインキュベーション施設と同等の民間施設の賃料が月額8万円だとします。

 この場合、月額7万円(年間84万円)を地方公共団体が申請人に代わって負担していると認められます。

 このようなケースでは、申請人が出資する資本金の額が416万円以上あれば、500万円以上を出資しているとみなされます。

 

 ただし、地方公共団体が申請人に代わって負担していると認められる額は、最大で年間200万円までですので、地方公共団体による起業支援を受ける場合でも、申請人本人は少なくとも300万円以上は出資する必要があります。

 

 また、地方公共団体による起業支援が終了した場合、経営管理ビザを更新する際には、あらためて資本金の要件を満たす必要が生じますのでご注意ください。

 

 

 次回のコラム【経営管理ビザの基本条件③:スタッフの確保(店舗型ビジネスなど、スタッフを必要とする事業を行う場合)】では、3つ目の基本条件となる「スタッフの確保」について解説してみたいと思います。

 

まとめ

 

Memo   

日本で株式会社や合同会社を設立して経営管理ビザを取るには、500万円以上の資本金を出資しなければなりません。

資本金は、会社設立後、事業に必要となる経費の支払いに使うことができます。

資本金は、経営管理ビザを申請する本人が500万円以上を出資する必要があります。

500万円以上の資本金は、その出所を証明しなければなりません。

自分の貯金で資本金を出資する場合は、預金通帳で資金形成の過程を証明することになります。

親や親族などからお金を借りて資本金を出資する場合は、借用書(金銭消費貸借契約書)や、親や親族などとの関係を証明する公的な書類、親や親族などに資力があることを証明する書類(例えば、預金通帳など)が必要となります。

株式会社を設立する場合、資本金を振り込むタイミングは、定款の認証後です。定款の認証前に振り込んでしまうと、会社の資本金として認められません。

事業の管理者として経営管理ビザを取るケースや、2名以上の常勤社員を雇用するケースでは、500万円以上の資本金は不要となります。

 

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